第1話


更新日時:2008/11/27

「いったぁ〜〜い・・・・・。」
「姉さん手加減してよぉ〜〜・・・・。」
涙目になりながら、巳姫が訴えてくる。
「知りません!!」
私は、素知らぬ顔で答えました。
「ま〜ま〜、その辺で・・いいじゃない?」
銀髪の女性が答えてくる。
「元はと言えば・・・・・祁琉兄さんと観月姉さんが・・・・。」

「「なんのことでしょう〜か?。」」

二人が声を揃えて、答えた。
「むぅ〜〜・・・・二人とも酷い・・・・・。」
「さてはて、なんでしょうねぇ〜。」
とぼけた顔をしながら、観月さんが巳姫に言った。

「まぁ〜・・・過ぎたことだ・・・・。」
やれやれぇ〜って感じで祁琉さんが纏める。
「むぅ〜・・・・。」
巳姫は納得できないように二人を睨んでる。
「4人とも仲がいいねぇ〜。」
御者のおじさんが、話しかけてきた。
「そうですねぇ〜・・・・。かれこれ、出会って、私たち二人が引っ付く形で旅に同行して二年になりますから・・ね。」

そうなのだ、以前街でガラの悪いのに絡まれているところを助けてくれ、その後同じ宿に泊まっているのを知って、祁琉さん達の旅の目的を知って、私達も同行を頼んだのが始まりなのだ・・・・。
そんな事を思い出しながら・・・・・砂漠で馬車を器用に操作する御者さんに感服しながら・・・。



「おっと私の名前は、カイル=ベンパーと言う。
好きに呼んでくれて構わないよ。
フィリアまで、きちんと送り届けるさ。」
おじさん、「カイル」さんが自己紹介をしてきた。
「私は、流衣、隣に居るのが妹の「巳姫です。」、そして、対面に居るのが「祁琉だ。」で、その隣に座ってるのが祁琉さんの妹の「神代観月です。」と言うことです。」
それぞれが私の台詞にあわせて自己紹介を済ませる。
「流衣に神代観月・・・?
何処かで聞き覚えが、あるのだが・・・・・
どこだったかな・・・・・?」
聞き覚えがあると言われて、ちょっとびっくりしてると、祁琉さんが・・・・。

「どこかの街で、流衣が演奏して、観月が歌ってるのを見たんじゃないか?」
「はっ?!そうだ!!!、イメンマハで歌ってるのを見かけたんだ。すごく綺麗な演奏と歌声、銀髪の妖精と黒髪の女神なんて言われてるのを聞いたなぁ〜・・・・。」
そんな風に言われてるのを知らなくて、私も観月ちゃんも、お互いに顔を見合わせて、びっくりした。

「妖精と、女神・・・ねぇ〜・・・・。分らなくもないが・・・・ねぇ〜・・・・。」

妙に納得したように祁琉さんが呟いた。
「観月ちゃんはともかく、私は流石におかしいですよ・・・・。」
「私だって妖精って・・・・・・。いくらなんでも・・・・。」
観月ちゃん自身も納得いかないようです。
「まー、実際に見て思ったが、二人ともそう呼ばれる意味が分かる演奏だったからね。」
「あの時は本当に良い物聞かせてもらったよ。」

二人で驚きと困惑がまじった顔をしていると・・・・。
「ところで、オヤジ、フィリアまでは後どれくらい着く?」
祁琉さんが、話をさえぎる様にそう聞いた。
「そうさねぇ〜、このペースなら明日には着くだろうな。」
「明日か・・・・。」
「なんだい?急いでるのかい?」
「いや、そう言う訳じゃない。だからこのままのペースで構わんさ。」
「そうかい。それならいいのだが・・・。」
祁琉さんの淡白な反応にカイルさんが困惑していると、観月ちゃんが・・・・。
「ごめんなさい。こう言う人なんです・・・。」
すぐさま観月ちゃんがフォローを入れる。
「はっはっはっ、そう言う意味じゃないから大丈夫だ。」
カイルさんは爆笑しながらそう答えた。
「こっちこそ、すまなかったね。いらない気を回させたねぇ〜。」
「おさまりつかんから、お互いそのくらいにしておけ・・・・。」
祁琉さんが纏めようとするけど・・・・。

「「「あんたが言うな!!」」」

御者まで一緒になってつっこんだ。
「・・・・・はもるな・・・・・。」
げんなりしながら、祁琉さんが、反論した・・・・・。

「それにしても・・・・すごく順調に進んでるね。」
「順調・・・・?何がだ?」
祁琉さんが巳姫に聞き返した。
「だって、砂漠に入ってから、何かに襲われることもないし、問題が起こることも無く進んでるじゃないですか♪。」
「はぁ〜・・・・確かに順調だが・・・・あまり気を抜くなよ?
もう、コンヌースオオトカゲの生息地に入ってる。
それに、亡霊砂漠戦士と呼ばれる魔物もコンヌース地域の砂漠には生息している。」
ちょっと呆れながら、祁琉さんが巳姫に注意する。

「それにぃ〜、蟻地獄とかもあるし、もしも、落とされたら地底洞窟抜けないといけないんだよ?
何より、イフリートって呼ばれる魔人も居るわけだし・・・・・。」
そう、祁琉さんと観月ちゃんの言う通りこの地域には割りと危険がいっぱいなのだ・・・・。
イリア大陸は、広大な土地で、移動も大変だけど、それ以上に、野生動物も獰猛なのが多い。
コンヌースオオトカゲなんて、体長は人間と同じ、それよりも大きな種類も居るくらいだ。

「まぁ〜まぁ〜・・・そんなに嬢ちゃんをびびらせるものじゃないさ。」
カイルさんが、言ってきた。
「この仕事をしている分、蟻地獄の場所は大体わかるし、何よりイフリートなんてのは、そんなに毎回現れる訳じゃないさ。
大体そんなに現れてたら、とっくにこの砂漠は進入禁止になってるさ。」
「まー、そうなんだがね・・・・。」
「なんにしても、コンヌースオオトカゲには注意だな。」
「そっかぁ〜、まっ、どれだけ大きなトカゲに襲われてもこの面子なら余裕だよね♪。何より祁琉にぃがいれば負けるわけないもん♪。」
なんて事を巳姫が言い始めた。
「サンドワームみたいにでかいのは・・・・流石に勘弁だな・・・・。」
私は・・・・祁琉さんの言葉に、そんなものは誰だってごめんだと思うって言葉を飲み込んだ。
「・・・ん?なんだ?流衣、何か言いたいことありそうだな??」
「いえ、別になんでも・・・・・。」
「んー?・・・・まー・・いいが・・・・ね。」
私は祁琉さんの鋭い指摘にびっくりしながらも、ごまかした。
「ワームは、トカゲじゃなく、芋虫じゃない??」
「あぁ・・・それもそうだな・・・・。」
どうでも良さそうに、観月ちゃんの突っ込みに祁琉さんが答える。

「話は戻るが・・・・戦闘に絶対はない。対人戦や、魔族戦は特にだ。
何より、野生動物と言っても一度攻撃を受ければ、大怪我するようなのも居るんだ。だから、余裕って事はないさ。」
少し呆れた感じで祁琉さんが巳姫に諭す。
「むぅ〜・・・わかってるもん。」
巳姫が不貞腐れながらつぶやいた。
「そんな事言ってると、本当に襲われるよ??。」
観月ちゃんが笑いながら、そんな事を言い始めた。

「・・・あ〜・・・すまん、本当にその通りになった」

カイルさんが指差した方をみると、コンヌースオオトカゲが2匹こちらを狙っていた。



「はぁ、・・・・・今日は運が悪いらしいな・・・」
「あははは・・・・。まぁ良いじゃない、運動運動♪」
ため息をつきながらつぶやく祁琉さんに対し、観月さんは苦笑いしつつも楽しそうに言いました。
「そうそう、がんばろ〜〜♪ 夕食のお肉、ゲットだよぉ〜!」
瞳を輝かせながら、巳姫がやる気(食べる気)満々で言いました。
「巳姫、よだれ垂らして、はしたないわよ・・・・」
まったく、困ったもので・・・。

「仕方ない・・・流衣、アイスボルトで足止め頼む。
 その間に俺が吹っ飛ばすから、観月と巳姫は強力な一発で決めてくれ!」
祁琉さんがそう指示を出すと同時に、皆馬車から降りて戦闘態勢に入った。
「頼むぞ、4人とも!」
馬車から、カイルさんの応援が入る。

「まかせろ!」
「もちろん♪」
「えぇ!」
「じゅるり・・・・!」


皆の声が揃った!(一人を除いて)

ザッ!!
祁琉さんが走り出すと同時に、私は右手に持ったアイスワンドを振り上げ、詠唱を始める。

「我が身に宿りし大いなるマナの精(ちから)よ・・・」

私は空いた左手でオオトカゲに向け狙いをつけながら詠唱を続ける。
このワンドはチェーンキャスティングという改造を施してあるため、一度に複数の氷の塊を作れる私のお気に入りのものだ。

「我がワンドを媒体に、凍て付く弾丸を撃ち鳴らせ!」

周囲の気温がぐっと下がり、私のワンドを中心に、5つの氷の塊が現れた。

「はぁぁぁああああ!!!」

祁琉さんが走りながら腰に差していた鞘から2本の剣を取り出し、敵の注意をひきつける。

「祁琉さん、行きます! アイスボルト!!!」

ガガガガガッ!
一気に放った5つの氷塊が狙い通りオオトカゲの足に当たり、2匹が足と地面を氷で縫われる。

「うらぁぁぁあ!」

その隙に祁琉さんが2匹の間に滑り込んで、体を回転させながら斬り込み、オオトカゲを空中に打ち上げた・・・!

ギリギリギリリッ・・・

最後の一撃を撃つ体勢が整った二人の弓が音を立ててしなる。
「矢の切っ先まで気を通しなさい、巳姫」
「うんっ!」
二人は打ち上げられたオオトカゲに狙いを定め・・・・。

「「あったれぇぇぇぇええ!!!!」」

ズドンッ!という音と共に2つの矢の奇跡が見え、2匹のオオトカゲの頭を撃ち抜いた・・・・。






「さって・・・・夕食のお肉ゲットだな・・・・・♪」
「いやはや・・・・息のあった連携御見それしたよ・・・・。」
カイルさんが、苦笑いしながら伝えてきた。
「コンヌースオオトカゲ二匹相手に無傷で・・とは・・・すごい実力だね、四人とも・・・・。」
「まぁ・・・それなりに長い時間一緒に旅してるわけだし、これくらいは・・・な。」
当然だろって、顔で祁琉さんが言った。
「それじゃー・・・今日はここで野営をしようか、もう直ぐ日も暮れる・・・・。ここで一晩明かして、明日フィリアに到着するように進もうじゃないか。」
カイルさんの一言で私たちは、野営の準備を始めた。

「お肉・・・♪お肉〜〜♪おにっく〜〜♪」

巳姫の変な歌をBGMにしながら・・・・・・・。




作者(ギルル)コメント:
と言うわけで少しだけ戦闘シーンを入れてみました…。
簡単にではあるけど…こんな感じでいいのかな…って感じですw
次はフィリアにつくシーンを書くつもりなので、気長にお待ちくださいw




▼第1話に関する感想はこちらへ 拍手だけでも嬉しいですよー♪^^▼